やっと会えたね


外はまだ、真っ暗だった。
《cacaoのときも、陣痛で起こされたなぁ》
思い出にひたっている暇はなかった。
陣痛が1回くるたび、どんどん増していく痛み。
眠くて泣き顔のcacaoも、家中の緊迫した空気がわかるのか。
眠い目をこすりながら、素直に出かける準備に応じた。
病院へ行く準備ができた頃には、うずくまって動けないほどの痛さ。
まだ動き出していない街を急ぐ。

病院に着き、一段落するまもなく戦闘態勢。
妊娠中に思い描いていた『出産』をしている場合じゃない。
淡い光の中、お風呂に入ったりCDを聞きながら、まったりとお産に入る夢は消えた。
ただ事ならぬ空気に、泣きべそcacaoの顔がキリリ・・・と引き締まった。
昨日まで、必要以上にべたべたとくっついて、手を握らなければ寝られないcacaoはもういない。
そこには、私の知らない『男 cacao』の姿があった。

苦しむ私の手を握ってくれたり、まだ日本語にならない言葉で応援してくれたり。
赤ちゃんの心音を聞くたび手をたたいて万歳をしてくれた。
その顔は必死だった。
泣きたいのを必死にこらえ、目をウルウルさせながら震えた声で「ばんじゃい!」
いきむな・・・と言われたって力が入る私の傍らで、
cacaoが一生懸命笑顔を作り、私の力を抜いてくれる。
仕事で来られなかったパパの代わり。イヤ、それ以上のアシストぶり。
目が覚めてから4時間チョット経過したとき。。。
「ふにゃあ」第一声とともに頭が出た。

生まれた瞬間のcacaoの顔は忘れられない。
驚きの中の引き締まった表情。
「しゅご〜〜〜い!(すご〜い!)」と叫んだ。
今まさに、目の前のママから生まれ出てきた小さな赤ん坊をフシギそうに見つめ、 恐る恐る触れるcacao。
《キミの弟だよ。今日からお兄ちゃんだよ。》
へその緒をつけたまま、私の胸にどっかり乗ってきた赤ん坊は、2重あご。
おもっ・・・・・
10日もよけいに腹にいたカンロクがある。
待っていたよ。こんにちは、アカチャン。やっと会えたね。

あたたかかった。
これが『嵐の前の静けさ』というのだろう。
後陣痛が収まる間、cacaoと二人。静かに、あたたかに時が流れた。

ありがとう。
cacaoがいたから、頑張れたんだよ。

cacao:2歳5ヶ月 milk:0ヶ月

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